2010年5月18日、三菱ふそうトラック・バスから、平成17年(新長期)排気ガス規制に適合した大型路線バス「エアロスター 」の新モデル「LKG-MP35F/37F系」が発表された。35Fと37Fの違いは、35Fがワンステップ車とツーステップ車、37Fがノンステップ車という違いである。現行のノンステップ(UDトラックスからのOEM車種である、エアロスター-Sは除く)はワンステップ車をベースに中扉より前をノンステップ化するという設計だったためか、ワンステップ車と同じく「MP35」だった(このため、ノンステップバスはワンステップバスの改造扱いとなり、型式もワンステップバスのそれの後に「改」がつく)ので、「MP37」の名前は3年ぶりの復活となる。
さて、新しいエアロスター、現行モデルがUDトラックスとのバス事業協力の一環で、UDトラックス製のMD92TJ型という排気量9,203ccのエンジンを搭載していたが、新モデルでは三菱ふそうトラック・バス製の6M60(T2)型という排気量7,545ccのエンジンを搭載する。これによって、燃費向上とエンジンの軽量化、およびワンステップ車やツーステップ車では乗車定員増も図れるようになったということである。また、搭載エンジンの変更により、排ガス浄化システムはそれまでの尿素SCR方式から、尿素SCR方式とDPFの併用という形になった。
また、トランスミッションはUDトラックスの大型観光バス、スペースアロー/スペースウィング(三菱ふそうトラック・バスエアロエース/エアロクイーンのOEM車種のスペースランナーA、スペースウィングAを除く)に次いでATに統一された。
このニュースは「バスマガジン」Vol.41で知ったのだが、実はこの記事を読んだときに、複雑な思いを抱いたのも事実である。
先ほど、UDトラックス(かつての日産ディーゼル工業)と三菱ふそうトラック・バスがバス事業で協力する、と書いたが、実を言うと、この話は「協力」とはいうものの、以前別のところで書いたが、実質的には三菱ふそうトラック・バスが仕切っているのではないかと思えるからだ。
そう思えるのも、
(1)エンジン型式変更に伴い、UDトラックスから供給される物は排気ガス浄化装置である尿素SCR装置のみとなる。
(2)UDトラックスと三菱ふそうトラック・バスが共同で設立するバス事業で合弁会社では、車体の製造は現在三菱ふそうバス・トラックのバスの車体を製造している富山市の三菱ふそうバス製造に一本化され、UDトラックスはそれまで同社の車体を製造していた西日本車体工業への車体の発注を停止する(そのあおりで、西日本車体工業は事業継続が困難になったということで、2010年8月いっぱいで解散する)。
(3)UDトラックスの西日本車体工業への車体発注停止に伴い、UDトラックスから三菱ふそうトラック・バスへノンステップ大型路線バス「エアロスター-S」および中型バス「エアロミディ-S」のOEM供給はできなくなる(このためか、三菱ふそうトラック・バスのWebサイトには中型バスはラインアップされていないし、OEM供給元のUDトラックスのWebサイトでも「エアロミディ-S」のオリジナルに相当する、「スペースランナーRM」、「スペースランナー JP」のページは準備中となっている。ま、日産ディーゼル工業の時代から、Webサイトのバスに関する情報提供にはあまり熱心ではなかったが)。
(4)一方、三菱ふそうトラック・バスからUDトラックスにOEM供給している大型観光バス「スペースウィングA」、「スペースアローA」、「スペースアローAショートタイプ」、大型路線バス「スペースランナーA」の供給は従来通り継続できる。実際、UDトラックスのバスを多数導入している西武バスでは、ここ最近UDトラックスのワンステップバスは、UDトラックバス「純正」の「スペースランナーRA」ではなくOEM供給車種の「スペースランナーA」を主に導入している。
(5)旧・日産ディーゼルがスウェーデン・ボルボの100%子会社となり、日産自動車の資本が入らなくなったことで社名変更した際、UDトラックスと三菱自動車工業から分社した、大型車専業メーカー「三菱ふそうトラック・バス」のように、社名にバスを入れなかったのは、バス製造から事実上撤退したがっていることの証ではないかと思われる。
というあたりである。
今回モデルチェンジされたエアロスターがUDトラックスにOEM供給されるかどうかは、まだどこも言及していないけど、2010年8月で西日本車体工業が解散してしまうことで、UDトラックスはバスの指定車体メーカーを失ってしまい事実上バスの生産ができなくなってしまうため、バス事業の合弁会社始動までは、自社のバスの供給は、バス事業で協業関係を結んだ三菱ふそうトラック・バス製のバスをOEM供給してもらうことになるだろう(と思ったら、5月27日にUDトラックスのWebサイトで、スペースランナーAの新モデルの話が出ていた。しかも、年間販売目標が400台/年と、UDトラックスのこの手のバスの年間販売目標に近い数字だ)。エンジンこそ三菱ふそうトラック・バス製なものの、UDトラックスが生産して、三菱ふそうバス・トラックにOEM供給していた中型バスは製造拠点だった西日本車体工業を失ってしまうので、しばらくはUDトラックス、三菱ふそうトラック・バスとも供給できなくなってしまう。かつては三菱ふそうブランドの中型バスは、三菱ふそうバス製造の前身、呉羽自動車工業、新呉羽自動車工業が独占製造していただけに、三菱ふそうバス製造としては忸怩たるものがあるだろうけど、中型バスの生産を早く再開するためには、西日本車体工業の製造設備を富山に移して、「エアロミディ-S」を継続生産するしかないと思うけど、どうするのかな? 中型バス市場は、いすゞ自動車と日野自動車のバス事業合弁会社ジェイ・バスの独占を許すつもりなのかな?
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